(令和5年10月05日)
子ども政策調査特別委員会会議録

質問内容/答弁内容

「令和4年度道立児童相談所における児童虐待に対する相談対応状況」について

中野渡しほ
⑴「虐待の内訳別対応結果の内訳」について
1.「助言指導」の判断について

 身体的な虐待も性的な虐待も全ての虐待において、子どもが在宅のまま、保護者指導を行う助言指導という虐待対応の割合が高くなっております。全体では9割近くとなっております。どのような状況、判断、評価によって助言指導で終えているのか伺います。

山谷 子ども家庭支援課虐待防止対策担当課長 
 助言指導の判断についてでありますが、虐待の通告を受けた児童相談所は、虐待の内容や重症度、子どもの発達や心理状態の把握のほか、過去の虐待歴、保護者や同居家族の状況、家庭が抱える問題などについて、市町村、学校、保育所などの関係機関とも連携、協力しながら調査を行い、調査結果に基づき、援助方針会議において施設入所や継続指導、助言指導による終結等の判断を行っております。

 虐待対応については、児童福祉法により児相と市町村の役割や責務が明確化されており、児相は緊急性や専門性が高い対応を行うこととされていることから、軽度の虐待ケースなど、市町村が中心となって再発防止のための見守りや子育て支援等を行うのが適当なケースについては、保護者に対し、虐待に当たる行為や子どもに与える影響の説明など助言指導を行った上で、児相での対応は終結し、市町村へつないでおります。

中野渡しほ
2.「助言指導」後の虐待件数について
 援助方針会議で判断を行って、緊急性や専門性が高い対応が必要な場合には児相、そして、その他はほとんどは市町村につないでいるということでありますが、助言指導で終えているケースで、その後、虐待が判明したケースはどのくらいあるのか伺います。

山谷 子ども家庭支援課虐待防止対策担当課長 
 助言指導後の虐待件数についてでありますが、令和4年度に助言指導で終結した3216件のうち、その後、本年8月までの間に再度虐待と認定されたことが確認できているケースは、9月末時点で75件となっており、市町村をはじめとする地域の関係機関と連携した再発防止に向けた取組を強化する必要があると認識しております。

中野渡しほ
【意見】
 9割近くが助言指導で終わっているということは、対応が本当に行き届いているのかと不安に思うところがありまして、今回は再度の通報の件数を改めてお伺いをさせていただきました。そういった確認もしていきながら、この助言指導という対応が、見逃しがないか、また、再発がない、きちんとした対策となっているか、より対応の仕方を検証していきながら、防止に向けた精度をしっかりと上げて行くことが重要であると考えております。

中野渡しほ
3.安否確認後の対応について
 児童虐待の大変深刻な重大な事件、それを検証していきますと、安否確認後にむしろ子どもに口止めをするかのような、虐待がエスカレートするという状況が明らかとなっております。
 安否確認後による虐待のエスカレートを防止するため、どのような対応対策を行っているのか伺います。

山谷 子ども家庭支援課虐待防止対策担当課長 
 安否確認後の対応についてでありますが、児童相談所では、通告受理後、原則48時間以内に直接または関係機関を通じて子どもの安否確認を実施するとともに、在宅で子どもの安全が確保できないと判断した場合には、緊急に一時保護を行うなどの対応を行っております。
 一時保護を行わない場合においても、保護者に対して、虐待に当たる行為の説明や子どもの心身に与える影響などを丁寧に説明し、同様の行為を行わないよう指導するほか、子どもに対しても、相談相手やSOSの出し方などを伝えるとともに、市町村をはじめ、学校や保育所などとも速やかに情報を共有し、組織的な見守りや関わりの機会を増やすことにより、小さな状況の変化にも留意するよう依頼するなどし、虐待の再発やエスカレートすることがないよう取り組んでおります。

中野渡しほ
【指摘】
 子どもさんがそばにいる場面で助言指導を行っているということですから、その場で子どもさんに、つらい状況があったときにはSOSの発信をこちらにしてねと、なかなかその場面でそういったやり取りというのは、ほとんどの場合難しいということが言えると思います。
 やはり、別の機会をしっかりと確保しながら、保育園や幼稚園の先生、また、学校の先生などにもしっかりと状況を把握してもらえるような、そういう連携をしっかりと取りながら、どちらも救っていかなければならないと思いますけれども、保護者の中には、児相や警察に突然押しかけられ、自身の思いをうまく伝えることができないという方もいます。中には障がいのあるお子さんの育児で懸命になって、でもかんしゃくなどが激しいお子さんもいたりするわけであります。そういった親側の気持ちの葛藤があるわけです。それをどこにも伝えることができないまま、そこで終わってしまうということになりますと、その受け止め先が今度は子どもに向けられるという可能性もあるわけであります。それをしっかり我々のほうに向けさせていくこと、それが虐待の再発やエスカレートの防止にも有効であると考えております。
 リスクの軽減にもつながることから、保護者の思いを受け止める相談等の体制の充実を図るなど、さらなる取組を行うよう指摘をさせていただきます。

中野渡しほ
⑵「子どもの年齢別の対応件数」について
1.中高生の虐待の傾向性について
 中高生の虐待は、その年齢になって起こっているものなのか、以前から断続的または継続的に把握されているものなのか、傾向を伺います。

山谷 子ども家庭支援課虐待防止対策担当課長 
 中高生の虐待の状況についてでありますが、令和4年度に虐待を受けたと認定された中高生822人のうち、約3割について、継続的か断続的かは不明であるものの、当該虐待の1年以上前に虐待が始まっていた可能性があったところです。

 道としては、こうした状況を重く受け止めており、虐待防止の啓発や早期発見に向けた相談体制の強化の重要性を改めて認識したところであります。

中野渡しほ
2.児童が打ち明けやすい体制整備について
 今回の御報告によりますと、小学生の虐待の件数が多くなっていて、その後、中高と低くなっているという状況でありましたけれども、中高で低くなったと見るか、別の見方が必要だとも思っております。小学生は素直に話す年代であることもありまして把握につながりやすい、でも中高と年齢が上がるにつれて口に出さなくなるという傾向があります。全ての児童が打ち明けやすい体制や対応、整備が必要であると考えます。どのように取り組むのか伺います。

山谷 子ども家庭支援課虐待防止対策担当課長 
 児童が打ち明けやすい環境の整備についてでありますが、道では、これまでも子どもにとって負担とならないよう、通話料無料の児童相談所の虐待対応ダイヤル189や相談専用ダイヤルのほか、子どもと家庭の様々な相談に応じる児童家庭支援センターに24時間の電話相談窓口を設置するとともに、令和4年度からは、スマートフォン等により気軽に相談できるSNSを活用した相談システムを導入するなど、相談しやすい体制の整備を図ってきたところであり、今後も、SOSを発することをためらう子どもたちの声が届きやすくなるよう市町村や学校、関係機関とも連携し、相談窓口の周知等を図ってまいります。

中野渡しほ
⑶「児童相談所の体制強化」について
1.児童相談所の保健師について
 児童相談所の保健師についての記載の中で、発達面のアセスメントをするという役目が記載されております。アセスメントには、本当に習熟したスキルを持って、標準化された検査をしっかりと遂行して、それが診断の材料にもなっていく重要なことであります。保健師はそこまでの訓練や習熟を持っているわけではないこともありますので、そこのアセスメントの意味合いをしっかりと専門性の役割を持ちながらやっていかなければならないとも考えるわけですが、保健師ができるのはどのようなことか、そして結果をどのように生かしてどのように対応するのか伺います。

山谷 子ども家庭支援課虐待防止対策担当課長 
 児童相談所の保健師についてでありますが、道では令和4年度から児童福祉法に基づき児童相談所に保健師を配置し、乳幼児や健康上の問題のある児童、疾患のある児童等について、発達面のアセスメントやケアを担うほか、保護者の育児能力や精神状態を把握し、その状況に基づき、医療機関や市町村との連絡調整、保護者に対する育児指導や助言指導などを行っております。

 なお、児童のアセスメントについては、発育状態の確認や健康管理などを行う保健師のほか、知能検査や心理検査などを行う児童心理司や児童の行動観察などを行う保育士などの専門職が連携して実施しております。

中野渡しほ
【意見】
 そうだと思います。しっかりと役割を持ちながら、最後に連携をしながら、適切な対応をしていくということが大事になります。

中野渡しほ
2.保護者への対応について
 虐待に至った要因として、今回の御報告の中では、全体では親の側の心または人格の問題の割合が41.0%と最も高くなっております。親に対するアセスメントや対応対策こそ重要であります。どのように対応するのか伺います。

森 子ども政策局子育て支援担当局長 
 虐待を行った保護者への対応についてでございますが、児童相談所では、虐待に至った背景や保護者の性格特性、育児能力、育児に対する考え方などの把握に努め、保護者の主体性も尊重しながら児童虐待への理解を促し、養育方法や生活の改善に関する助言指導を行うとともに、保護者の状況等に応じて、市町村の相談窓口や支援制度につないだり、医療機関の受診を促すほか、嘱託医によるカウンセリングや児童心理司によるペアレントトレーニングなどにより、子どもとの適切な関わり方等を学ぶ機会を設けているところでありまして、今後も、保護者の気持ちや置かれている状況にも配慮しながら、再発防止に向けた支援に取り組んでまいります。

中野渡しほ
【意見】
 実はここの対策が一番大事なところであると考えております。そして、今おっしゃっていただいた御答弁は、本当にそのとおりなのですが、実際にはその親がそれを受け止めてそのように行動を取ってくれるかというところが、大きなハードルになってくるのだと思います。その方々の周辺の人間関係、信頼関係者などともしっかりと連携を取りながら、本当に温かくしっかりと親のそういった対応のケアをしていくことをお願いしたいと思います。

中野渡しほ
3.虐待対応に係わる連携について
 次に、虐待対応に係る連携についてお伺いいたします。虐待事案の情報提供や緊密な連携が、警察、医師、弁護士となっております。
 しかし、最も察知力や家庭状況の把握ができる立場にあるのが園の保育士や学校の教諭であると考えております。緊密にそちらも連携すべきと考えますが、所見を伺います。

山谷 子ども家庭支援課虐待防止対策担当課長 
 虐待対応に係る連携についてでありますが、児相が対応する虐待ケースについては、警察との間で情報共有することがルール化されておりますが、全国的に子どもの命が脅かされる事案が発生している中で、警察との連携が不十分との検証も行われているところです。

 また、法的な対応や障がいやトラウマなどの医学的診断が必要な場合もあることから、警察、医師、弁護士等と連携し、迅速な安全の確保や専門機能の強化を図ることが必要と考えているところです。
 保育所や学校などは子どもが多くの時間を過ごす場所であり、保護者と関わる機会も多く、小さな変化に気がつきやすいほか、子どもの特性や家庭の状況なども把握していることから、虐待の発見や、親子関係のサポートなどに関する重要な役割を担っていると考えており、引き続き、日常的な情報共有も含め、緊密に連携を図ってまいります。

中野渡しほ
4.こども家庭センターについて
 こども家庭センターについて伺います。
 道内各地に既に設置されている子育て支援センターとどのような違いがあるのか、どのような職種が携わって、どのような機能を持って、どのような効果を目指しているのか伺います。

山谷 子ども家庭支援課虐待防止対策担当課長 
 こども家庭センターについてでありますが、改正児童福祉法により来年度から創設されるこども家庭センターは、全ての妊産婦子育て世帯を対象に、児童福祉と母子保健の一体的支援を行う機能を有する機関であり、主に虐待対応を含む児童福祉相談などを担当するこども家庭支援員等と主に母子保健の相談などを担当する保健師等が配置され、両者が情報共有、連携協力しながら子ども及びその家庭、妊産婦の実情把握や調査指導、サポートプランの作成、保健指導、健康診査など切れ目のない相談支援を行うこととされております。

 一方、子育て支援センターは、保育所などに併設され、主に乳幼児期の子どもとその親が交流を深める場であり、子育てについての不安や悩みも相談できる場となっております。

中野渡しほ
⑷今後について
 今後どのように虐待を防止していくのか伺います。

野澤 保健福祉部子ども応援社会推進監 
 今後の取組についてでございますが、全国的に児童虐待相談件数が増加を続ける中、重度の虐待等により、親子分離や専門的な支援が必要なケースにつきましては、児童相談所が対応し、虐待の未然防止、指導や支援を受けることにより、親子が家庭で生活を続けられるケースにつきましては、市町村が対応するなど役割分担の明確化が図られてきたところでございます。

 虐待の未然防止や早期発見のためには、普及啓発はもとより、市町村を中心とした関係機関の緊密な連携による見守りや支援が不可欠であることから、道といたしましては、市町村に対し、学校、保育所、警察、児童相談所などの関係機関により構成され、要保護児童及びその保護者に関する情報交換や支援内容の協議を行う要保護児童対策地域協議会の運営や虐待対応に係る技術的助言を行うほか、こども家庭センターの早期設置を促すなどし、地域一丸となりまして、児童虐待の未然防止と早期対応に万全を期すとともに、子どもや家族が健やかに生活できる社会づくりに取り組んでまいります。

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